14.4.12

取材中に思ったこと。



久しぶりに怒濤の取材月間です。

イギリスでは、アンティークの小さなお店がたくさん集まった、屋内マーケットのことを「アーケード」と呼んでいます。

昨日の取材先は、そんなとあるアーケードでした。

アーケード内で商品の撮影をするにあたって、どこのお店もとても狭く、またアンティークのランプがあっちこっちに灯っているため、光の加減が非常に難しく、また午後予定していた取材先からキャンセルが入ったこともあり、一軒一軒ちょっと時間をかけて撮影させていただきました。

カメラマンさんが撮影に集中している間、私自身はお店の方から、記事にするために必要な情報をうかがって、それでも時間があるときは、どんどん話が深くなっていって、最後にはその方の人生について、かなり細かくうかがうこともあります。

昨日まで知りもしなかった方に、「どうしてこの仕事を始めたのか」「出産後はどうやって復帰したのか」「娘さんは仕事をつがないのか」などなど、そんな話をうかがって、人生勉強させていただけることが、私にとっては、この仕事の最大の魅力のひとつだったりします。

さて、昨日もまさにそういう日。アーケード内の取材先一軒目で、「あなた前にも取材に来たことあるでしょ」と言われ、確かにこのアーケードを取材させていただいたことは過去に2回ほどありましたが、以前に仕事をしたアンティークガイド(右側のコラム参照)では、アンティークショップばかり100軒以上取材して記事を書いたので、このお店を取材したかどうか、正直言って自信がありません。

「もしかしたら…。アンティークガイドの時に…」と答えると、「そうでしょ、そうでしょ。いまでもその本持ってくる人が多いのよ。もう引退しちゃったけど、前回はうちの母親が対応したはずよ」とひとしきり、お母さんがどれだけ取材されたことをうれしがっていたか、本を見せ回っていたか、などを話されて、さらに彼女に電話して、「ガイドブック作った子がまた来たわよ!」なんて言っています。

うーん、本当に同じ本を指しているのだろうか……。私の作ったガイドはかなりマイナーですし、そんなに売れているようにも思えないし、なんか違ってたら悪いなぁと思って、話題が変わったときには正直なところほっとしてしまいました。

最後に名刺をお渡ししたら、アーケードのカードの裏に「Beth」というお名前とともに、電話番号、メールアドレスなどを書いて、「また来てね」と渡してくれました。

そのあと数軒取材して、くたくたになって家に帰ってきて、晩ご飯の準備をしているときに、ふと昼間の会話を思い出し、自分のつくったガイドブックを開いてみました。

果たしてそこには、「ベス&ビバリー」という名前のお店がしっかり入っていました。たった2分の1ページの小さな記事でしたが、いまもお店で扱っている商品の年代、種類は同じです。きっとお母さんがビバリーさんなのでしょう。

私自身が書いたその記事を見つけて、なんだかとても複雑な気持ちになりました。私にとっては、100軒取材したなかの1軒でしたけれども、お母さんにとっては、たぶんたった一度の日本人からの取材だったのかもしれません。そう思ったら、思い出せなかった自分がなんだか申し訳なくて、仕方がないことだとわかっていても、ちょっと切なくなりました。

忘れてしまうのは、本当にもう仕方がないことだとしても、ひとつひとつ愛をもって仕事しなければいけないなぁと、襟を正す思いでもありました。

この件でもうひとつ、過去にあった似たようなことを思い出したのですが、それについては、長くなるので、また改めて書きたいと思います。

☆☆☆☆☆

さて、今日から、毎年恒例の「North London Music Festival」が始まりました。1920年から続いているこのフェスティバル、今年は92回目を数えます。


私自身はここ数年、Council Memberをさせていただいているのですが、昨年から、弊社KRess Europeもグランドパトロンとして、名前を連ねさせていただいています(こちらのページに)。なんかちょっとエラソーな感じですよね。Kのあとに不要な半角が入っているのはご愛敬ということで…(笑。でも来年は直してもらいます…)。

これから5月上旬にかけて、なんやかんやとお手伝いに行ってきます。大したことはなにもできませんが、地元の若いミュージシャンが育っていくことに、ほんの少しでも力を貸すことになるなら嬉しいな、と思っています。

いざ、今年も、私のつくったこの貼り紙をば……。



2 件のコメント:

  1. お久しぶりです(といってもそんな気がせず・・)。
    そしてお仕事お疲れ様ですヽ(^o^)

    KYOさんの仕事/活動って人々や地域の記録書を作成してるみたいなところもあるのだな、と思いましたねぇ。出版の仕事、そしてコミュニティーでの活動は楽ではないと思いますが、決して上っ張りだけでない本物の人材を持つことができて地元も幸運ですよ!がんばれー。

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  2. yuzuさん〜! コメントありがとうございます。
    ほんと、実はぜんぜんお久しぶりな気がしない……♡

    あたたかいコメント、本当にありがとうございます…。
    仕事なんだけど、仕事だけじゃないんだよなぁって、思うことが多いんですよね、取材中って。机にかじりついての編集作業も私、嫌いじゃなくて好きなんですけど、取材って、やっぱり別の楽しさと難しさと、あと心構えみたいなもの?…人を相手にしているってことを忘れちゃいけないなぁみたいなところ…再認識しました。

    ねー、yuzuさん、私たちいつトロントに行くの? おやつの準備しちゃったんだけど…。

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