3.10.12

遠くて近くてやっぱり遠い、いとしの国と
旅するスーツケース。

新宿の末広亭の前。タイムスリップしてしまったかのような通りです。

9カ月ぶりに、日本に一時帰国してきました。

若いときにはまったく無縁だったのに、年とともにひどくなる時差ぼけと、出発前に家人からもらってしまった風邪をこじらせて、こんなに体調最悪な帰国が、かつてあっただろうか、と遠い目(&風邪のため涙目)をしてしまうくらい、よぼよぼな帰国となりました。

けれども、せっかく帰ってきたのに、「よぼよぼ」なだけで終わってたまるものですか、とばかりに、よぼよぼながらも予定通り会いたい人に会って、いくつかの場所に出かけてきました。風邪をうつされるリスクを冒しながら、ダミ声の私に会ってくださった、心やさしき皆さま、その節はどうもありがとうございました。

テレビでは毎日毎日、領土問題に関するニュースが流れ、激しいデモとか、流血騒ぎとか、そんな映像が映し出されていました。街に出れば、いつもとまるで同じ日常なのに、どこかの国で行われている、自分の国に対する激しい抗議活動は、どこか絵空事のように実感がなく、テレビのなかの知らない人が力説する正当性を盲信することも、なにかに感情移入することもできず、同じような情報を見ているはずなのに、なぜかちゃんと感情移入できる人たちの言葉をただぼうっと聞いて立ち尽くすのみでした。おそらく、ただ私が勉強不足なだけなのでしょうけど…。

すべてのものは変わり続けるし、誰もその変化を止めることはできない。いつもは遠く離れている自分が生まれて育った国、日本。自分の一部でありながら、帰るたびに遠ざかっていくような気がするのは、日本も私も変化し続けている限り、しかたがないことのかもしれません。なかなかピントが合わないカメラのレンズみたいに、ウィーンウィーンと音を立てながら、遠くなったり近くなったり、ピタッと合ったりぼけてみたり、そんなふうに、自分の立ち位置の危うさを感じることもしばしばです。

とは言いつつ、やはり気心の知れた旧知の友人との時間は、本当に貴重で楽しくて、風邪も時差ぼけもふっとぶ高揚感を与えてくれます。特に今回は、大学時代の同級生ふたりとプチ同窓会ができて、いつにない楽しく幸せな時間を過ごすことができました。このふたり、ひとりは海外駐在中、ひとりは東京以外に住んでいるのに、たまたま同じ時期に東京にいたという…神さま(またはSNS)、どうもありがとう。

揃いも揃って40代半ばになってしまった私たち。でも話題はiPhoneっていう…。

さて、そんなこんなで、最後まで風邪と時差ぼけを克服できなかった私。アムステルダム経由でロンドンに帰ってくる予定だったのですが、なんと、アムステルダムで、まさかの飛行機乗り遅れ、という悲劇に見舞われました。

「悲劇に見舞われました」なんて、ドラマクイーンな言い方をしてしますけど、ただ考え事をしていてぼんやりしてて、もたもたしてて、乗り逃したのです。乗り換え時間は確かに短かったのですが、「同じ乗り継ぎ便だった同乗のふたりは、ふたりともちゃんと乗り換えてロンドンに飛び立ったわよ」と再予約の窓口で、航空会社の人に言われてしまい、ぐうの音も出ませんでした。

それで、おとなしく150ユーロ払って、1時間半後のロンドン便を取ったのですが、「あなたの荷物は、予定通りの便でロンドンに向かってるわよ! ちゃんとヒースローで受け取れるように、電話しておいてあげる」と、航空会社の人が私の目の前で受話器を上げて、電話してくれたので(オランダ語だったので、内容までは聞き取れませんでしたが)、「ありがとうありがとう」とぺこぺこお礼を言って、はー、よかった、一件落着。

なーんて、そんなうまいことが、ここヨーロッパでありましょうか。
否、あるはずがございません。

ヒースローについて、「私の荷物、どこでしょう?」と航空会社の窓口に聞きに行ったら、「あなたの荷物は、スキポール(アムステルダムの空港)にあります」と中学生でもわかる英語ではっきりと言われました。

「えっ、だってだって、あなたの同僚が、荷物は先の便に乗ってヒースローに行ったって。私の目の前で電話してたんですけど」と食い下がってみたものの、「レギュレーションで、荷物だけが持ち主よりも先に、目的地に着く、ということはないのです」とまたしてもキッパリ。

「でもでも、私の荷物は、東京で預け入れて、そのまま自動的にその便に乗ることになっていたはずなんです」と言うと、「乗り遅れた人の荷物は下ろされます」とだめ押しのキッパリ。

がーん。下ろされたんだ…かわいそうな私のスーツケース。雨の降っていたスキポール空港。ぽつんと下ろされた黒のリモワが脳裏をよぎりました。

「気の毒だけど、あなたの荷物は24時間以内に直接ご自宅にお届けすることになります。この用紙に記入して」と事務的に用紙を渡されました。まぁ、こういう人(私みたいなバカ)が、一日に何人もいるんでしょうね、きっと。

はたして。

翌日にヒースロー空港から二度も確認の電話があって、夜9時過ぎに私のスーツケースは、持ち主よりも1日遅れて帰宅しました。角のひとつがへこんで角じゃなくなっていたけど、ひとまず帰ってきてくれてほっとしました。あぁ、よかった。

飛行機に乗り遅れると、自分が世界一のだめ人間のような気持ちになるものですが、実はそんなの長い人生のなかではたいしたことじゃないんです(自己弁護でもあることは、否定しませんけど)。同じように飛行機に乗り遅れたことのある方、たぶん、いっぱいいると思うのですが、まぁ、そういうこともありますよね。

関連で、以前にmixi日記に書いた、私が前回乗り遅れたときのお話も全体公開にしておきましたので、ご興味のある方は以下もどうぞ。
飛行機に乗り遅れそうになったこと、乗り遅れたこと。

新宿駅のなかの「ビックロ」の広告。ちょうど帰国中のオープンでした。
家電や服と同様に、私も進化しているのかしら。


2 件のコメント:

  1. 末広亭界隈は東京にでてきたときから仕事場の近くだったのでよくうろうろしてました。あの辺の新宿らしからぬ雰囲気はいまでも好きですねぇ~♪

    それにしても乗り遅れはしょうがないとしてもスーツケースのほうは困ったものですね。正論だから文句もいえない(><)

    わたしは逆にトランジェットでモスクワに一泊したとき何時間たっても係りの人が迎えにこなくて途方にくれたことがあります。
    はじめての海外旅行で格安だからといって行きにアエロフロートなんて選ぶんじゃなかった(><)
    帰りのエールフランスはたまたま格安チケット入手できたんだけどあまりのサービスのよさに脱帽しましたよ。
    アエロフロートの悪評は聞いてたんですがそこまで酷くはないだろうとたかをくくっておりました。

    まぁ~、四半世紀前のいい思い出です(笑)



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    1. GAN☆さん、コメントありがとうございます。
      いやはや、お騒がせしましたが、スーツケース戻ってきてよかったです。ほっ。

      末広亭のある末広通りは、通りが丸ごと昭和の印象ですよね。どこも絵になるなぁって思いました。

      アエロフロート、実は乗ったことがないのですが、一度経験してみたいです。
      トランジットで一泊しないといけなかったんですね。でも航空会社の人が迎えに来てホテル送迎してくれるんですか? 逆にすごいサービスいいのかも…?

      飛行機もさることながら、私、死ぬまでにシベリア鉄道を経由して、陸路と船だけで日本に帰ってみたいです。

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